生物多様性


自然環境や生物多様性の喪失

 私たちの社会は、豊かな自然環境や生物多様性によって支えられています。まず、多様な自然環境があり、それぞれに多様な生きものがいることで、多様な生態系が成り立ちます。そして、それらの生態系によって、安全な水、食料、資源を得たり、安定した土地、気候のもとで暮らしたり、地域独自の文化を育んだりすることができるのです。

 今、この自然環境や生物多様性が急速に失われています。例えば、2019年に公表された「IPBES 生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書」では、以下のことが指摘されています。

✓過去50年の間、人類史上かつてない速度で地球全体の自然が変化している。

✓世界の陸地の75%が著しく改変され、海洋の66%は累積的な影響下にあり、湿地の85%以上が消失した。

✓本評価報告書で評価した動物と植物の種群のうち平均約25%が絶滅の危機にある。

〈参考〉

「IPBES 生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書 政策決定者向け要約」(2019年 環境省・公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES))( https://www.env.go.jp/content/000295408.pdf

世界で取り組むネイチャーポジティブ

 自然環境や生物多様性は急速に失われており、既に私たちの生活に大きな影響を及ぼすほど深刻になっています。このため、自然環境や生物多様性に対する負の影響を減らして喪失を食い止めるだけではなく、2030年までに回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」が世界的な目標として掲げられるようになりました。

 自然環境や生物多様性の喪失は、市街地化や森林伐採などの開発、里地里山の荒廃、外来種の侵入、化学物質の拡散、気候変動など、様々な要因で生じています。そして、これらの要因の背景には、世界的な人口増加、大量消費型の経済活動、グローバル化など、社会経済の大きな変化があります。

 そのため、「ネイチャーポジティブ」を実現するためには、従来の自然保護だけではなく、気候変動対策や資源循環などの様々な分野と連携しながら社会経済を変革していく必要があるのです。

〈参考〉

ネイチャーボジティブポータル( https://policies.env.go.jp/nature/nature-positive/
   

 社会経済を変革し「ネイチャーボジティブ」を実現するためには、多くの市民が生物多様性を含む幅広い環境問題に興味を持ち、自分ごととして行動していくことが大事です。

 そのためにも、各地の「市民団体」がたくさんの市民を巻き込みながら、地域の生物多様性の保全や再生のための活動をすることには大きな意義があります。まず、様々な背景をもつ人たちが集まることで、様々な活動のアイデアが生まれ、活動の領域が広がり、やりがいや生きがいにもつながります。そして、活動で得られた知識や意識が、普段の生活(家庭、学校、職場など)でも生かされ、社会経済の変革の第1歩となる可能性があるのです。

 これらを踏まえ、当法人は、「市民団体」のやりがいや技術力の向上、行政や他団体との連携を通じ、生物多様性の保全や再生の連鎖が生まれる社会を目指していきます。

自然共生サイトへの登録

 世界では、「ネイチャーポジティブ」を実現させるため、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全するという「30by30(サーティ・バイ・サーティ)目標」が掲げられています。

 日本の現状を見ると、法的に設定されている保護地域は、2021年時点で陸域の20.5%、海域の13.3%にとどまっています。そのため環境省は、2023年度から「民間の取り組み等によって生物多様性の保全が図られている区域」を「自然共生サイト」として認定する取り組みを始めました。この「自然共生サイト」から、法的に設定されている保護地域を除いた区域がOECM(Other Effective area-based Conservation Measures)として国際データベースに登録されます。環境省は、このOECMと法的に設定されている保護地域を併せた面積を陸域、海域のそれぞれ30%以上に拡大することを目指しているのです。

30by30ロードマップ

出典:環境省 30by30 WEBサイト( https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/
   

 日本では、各地の「市民団体」によって、地域の生物多様性の保全や再生のための活動が行われてきました。このなかには、既に「自然共生サイト」への登録の条件を満たしていると考えられるものもたくさんあります。

 「市民団体」にとって、活動地域を「自然共生サイト」へ登録することは、活動の認知度が上がり、企業からの協力や新たな活動メンバーが得られやすくなるというメリットがあります。一方で、「自然共生サイト」へ登録するためには、下記のように大きな労力が必要であるのも事実です。 

審査・認定の流れ具体的な内容
1.事前相談活動内容や申請内容等について、認定事務の事務局または管轄の地方環境事務所に
相談、アドバイスを受けることができる。
2.書類作成
  と申請
「地域生物多様性増進活動の手引き(提出書類、記載例編)」(環境省)をもとに
申請書類一式を作成し、事務局に提出する。
3.予備審査事務局が、提出された申請書類を確認する。必要に応じて、提出された内容に関す
る確認や不足書類の提出が求められる。
4.有識者
  審査委員会
生物多様性の増進に関する専門的な見地から意見を聴くため、有識者による審査が
行なわれる。
5.省庁審査主務省庁(環境省、農林水産省、国土交通省)による審査が行なわれる。
6.認定審査の結果をもとに、環境大臣・農林水産大臣・国土交通大臣から認定される。

資料:地域生物多様性増進活動の手引き(概要編)(環境省)( https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/documents/lowBio/30by30site-gaiyou.pdf )をもとに作成
   

 当法人は、「市民団体」の活動のやりがいや技術力の向上、「30by30目標」の達成に向けて、「自然共生サイト」への登録に向けたお手伝いをします。ご興味のある「自治体」「市民団体」「その他(どなたでも)」の方がいましたら、気軽にご依頼、ご質問をいただければと思います。〔お問い合わせ〕

〈参考〉

環境省 30by30 WEBサイト( https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/
   

活動計画の作成

 「市民団体」が活動地域を「自然共生サイト」へ登録する際、「増進活動実施計画」という書類をつくる必要があります。この計画の内容は、活動タイプ(維持タイプ、回復タイプ、創出タイプ)によって変わりますが、いずれにしても下記のように記載しなくてはいけないことがたくさんあります。

「増進活動実施計画」作成の留意点やポイント

1.生物多様性の価値があることを示す(維持タイプ)

✓生物多様性の価値は手引きに記載された9つのうち、1つ認められる必要がある。

✓実施区域で確認された動植物種(概ね5年以内の生物調査データ)を提出する必要がある。

2.具体的な目標と活動計画を示す(特に、回復タイプ、創出タイプ)

✓回復タイプ、創出タイプについては、生物調査データを提出する必要がないが、その代わりに、明確な目標、実現可能な活動計画を示す必要がある。

✓目標は、実施区域の現況、実施区域の土地利用の変遷、実施区域の周辺の状況、実施区域の課題(外来種・鳥獣被害等)を踏まえて設定する必要がある。

✓活動計画は、目標達成に向けた、具体的な活動手法、タイムスケール、専門家などとの協力・連携による実施体制を示す必要がある。

3.土地所有者・公物管理者の同意、法令遵守が必要

✓実施区域のすべての土地所有者からの同意が必要である。

✓実施区域において法令条例を遵守しているかの確認が必要である。

✓実施区域が公物管理区域と重複する場合、隣接する場合は、公物管理者の確認・同意が必要である。

資料:自然共生サイト取組事例と申請に向けたポイント(2026年 独立行政法人環境再生保全機構)( https://www.erca.go.jp/nature/seminar/2025/pdf/yokohama_kouen03.pdf )をもとに作成

 活動地域を「自然共生サイト」へ登録する場合はもちろんですが、登録しない場合にもこのような活動計画を作成することには大きな意義があります。例えば、「市民団体」のメンバーのなかで、活動地域の「生物多様性の価値」の共通認識があれば、活動の方向性がブレにくくなります。また、具体的な目標や活動手法、実施体制などが明確になっていれば、生物多様性の保全や再生にとってより効果的な活動を進めることができるようになります。

 当法人は、「市民団体」の活動地域を「自然共生サイト」へ登録するか否かにかかわらず、このような活動計画の作成のお手伝いをします。ご興味のある「行政」「市民団体」「その他(どなたでも)」の方がいましたら、気軽にご依頼、ご質問をいただければと思います。〔お問い合わせ〕

外来種駆除計画の作成・現地作業

 近年、経済活動の発展によって人や物資の移動が活発となり、国外や国内の他地域から意図的・非意図的を問わず人為的に導入される外来種が増えています。また、気候変動によって外来種の分布拡大のリスクも高まってきています。

 このような外来種のなかには、生態系、人間、農林水産業に影響を及ぼすものがたくさんあります。

影響の種類影響の内容
生態系への影響外来種が侵入し、新たな場所で生息するためには、餌をとったり、葉っぱを茂らし
て生活の場を確保したりする必要があり、もともとその場所で生活していた在来の
生物との間で競争が起こる。
人の生命・身体への影響たとえば、毒をもっている外来種にかまれたり、刺されたりする危険がある。
農林水産業への影響外来種の中には、畑を荒らしたり、漁業の対象となる生物を捕食したり、危害を加
えたりするものもいる。

資料:日本の外来種対策(環境省WEBサイト)( https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/invasive.html#sec3 )をもとに作成
   

 そのため、外来種がある地域に侵入、定着した場合には、早めの駆除が望まれますが、「活動団体」にとっては下記のように様々な課題があります。

✓たくさんの外来種があるが、それぞれが生態系などにどのような影響を及ぼすのかがわからないため、駆除の優先順位を決めることができない。

✓環境省が指定する「特定外来生物」を駆除する場合、個体の運搬などのために許可申請が必要になるが、申請の方法がわからない。

✓効果的な駆除方法がわからず、いくら作業しても個体が減らない。

 例えば植物の場合、一年草であれば種子をつくらせない、拡散させないことが大事ですし、多年草であれば地下茎や根をしっかり取り切ることが大事です。他にもその種の性質によって駆除の際に気を付けることが変わってきます。このように、外来種の駆除には多くの知識や経験が必要になります。

多年草は地下部の特性を把握することが大事
(ウチワゼニクサの根茎と根の例)

土をゆすりながら根茎を切らないように抜き取る
(水辺の生きもの研究会との合同作業の例)

 当法人は、これまでに蓄積した知識や経験を生かし、外来種駆除計画の作成や現地作業のお手伝いをします。ご興味のある「行政」「市民団体」「その他(どなたでも)」の方がいましたら、気軽にご依頼、ご質問をいただければと思います。〔お問い合わせ〕

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